『一塊のパン―ある学徒兵の回想(上・下巻)』装丁

designPOOLで装丁の仕事を始めてちょうど50作目の本『一塊のパン―ある学徒兵の回想(上・下巻)』が仕上がりました。今回は装画に中島真由美さんの作品を使わせて頂きました。この本は戦争中に青春期をおくった上尾龍介さんの回想録です。上尾さんは北京で学生生活を過ごし、終戦間際の昭和20年3月学徒招集。敗戦を北部朝鮮で迎え、ソ連軍の捕虜としてウラジオストクへ。シベリア抑留です。タイトルの「一塊のパン」とは、捕虜収容所で再会した学友からもらった黒パンのこと。飢えで苦しんでいた上尾さんは「このパンがなければ生きて日本の土は踏めなかっただろう…」と言います。
上尾さんは今年89歳。ご自身が体験した惨状を「どうしても伝えなければ」という思いで、帰国後すぐに抑留中の出来事を書き留めはじめたそうです。戦後70年を迎える今年、数多くの戦争関連の本が出版されていますが、この本は少年期の上尾さんの視点で語られているように感じます。戦争が当たり前だった時代。でも…できれば戦争には行きたくなかった少年時代の上尾さん。装画に中島さんの作品を使わせていただいたのは、感性豊かな上尾少年の想いを表現出来れば…と思ったのが理由でした。多くの方に読んで頂きたい本です。〈田中智子〉
編著者:上尾龍介 出版社:中国書店
(上)http://www.cbshop.net/search/to.cgi?up_qa1=359623
(下)http://www.cbshop.net/search/to.cgi?up_qa1=359624