『ラウンド・アバウト──フィールドワークという交差点』

装丁を担当した『ラウンド・アバウト──フィールドワークという交差点』が仕上がりました。
本書は若手フィールドワーカー16人によるエッセイ集です。
「ラウンド・アバウト」とは近年日本でも増えている環状交差点のこと。フィールドをこの「ラウンド・アバウト」に見立てタイトルにしたとのことです。
「例えば、フィールドに入っていくのは、ドライバーが環状交差点に進入していくのに似ている。(略)ただ、ドライバーとの大きな違いは、フィールドワーカーにとっては、この交差点こそが目的地だということだ。交差点としてのフィールドワークでは、自分の前や後ろを行くドライバーを眺めたり、その距離を詰めて並走したり、あるいは離れてみたりしながら、そこで出会った人たちを理解しようとする。運が良ければ、何周も一緒に並走してくれる友人に出会えることもある。──まえがき より」

カバーは、この交差点(ラウンド・アバウト)の形を使ってデザインしました。
http://designpool.jp/bookdesign/

編者=神本 秀爾/岡本 圭史
集広舎/2019年1月/四六判・並製/248頁
本の詳細はこちらです。https://shukousha.com/information/publishing/7041/

『清正公の南蛮服──大航海時代に渡来した一枚のシャツの物語』

装丁を担当した『清正公の南蛮服──大航海時代に渡来した一枚のシャツの物語』が仕上がりました。
http://designpool.jp/bookdesign/

著者=伊藤なお枝
花乱社/2018年/四六判・並製/264頁
本の詳細はこちらです。http://karansha.com/kiyomasakou.html

「ボヘミアン・ラプソディ」

ここ数年は仕事関係の事しかここに書くことはないのですが、たまにはいいかな?と思って
ちょっとプライベートなことを書いてみようと思います。(田中)



11月9日(金)映画「ボヘミアン・ラプソディ」公開の日、私は朝からそわそわしていました。
仕事が夕方までに片付けば観に行こうとは思っていたのだけど、映画を観るくらいでどうしてここまで興奮しているのか...?
自分でもおかしかったのですが、それはちょっと14歳の頃の気持ちに戻っていたからかもしれません。


中学生の頃、ロックバンドQUEENに夢中だった時期がありました。月々のお小遣いもお年玉も全てレコードやQUEENが掲載されているロック雑誌(特に『ミュージック・ライフ』)に遣い、その頃の私にとって、QUEENが全てでした。
4枚目のアルバム『オペラ座の夜』がリリースされ「ボヘミアン・ラプソディ」が大ヒットした1976年、QUEEN2度目の来日公演を知りました。
福岡公演は福岡市九電記念体育館で3月26日(金)18時から。


当然、絶対に行きたい!!私は母に懇願しました。
でも、毎日学校から帰るとすぐにステレオの前に座りヘッドフォンをつけ(ヘッドフォンをつけないとウルサイ!!と怒られるので)レコードばかり聴いていた私を良く思っていなかった母が、ロックコンサートなど行かせてくれるはずもなく、それに当時中学生の私が一人で九電記念体育館まで行くのは無理がありました。
私の家は佐賀県のド田舎。佐賀市までローカル線で40分、更に佐賀から博多まで1時間以上。
また博多駅からどうやって会場まで行くのかさえ知りませんでした。行けたとしても、18時からのコンサートが終わって家に帰るにはかなり夜も遅くなってしまう。
悲しいけど諦めるしかなく...。そして福岡公演当日の朝になりました。


学校はもう春休みに入っていたのでゆっくり朝ごはんを食べていると、母が「今日は天神に買い物に行くからついてくるね?」と聞いてきました。
母はQUEENのコンサートが今日だということを絶対に忘れている!!
「私もいく!!」と即答。3歳年上の兄も一緒に三人で天神に行くことになりました。

天神に着いてすぐ、お昼ご飯を食べようということになり商店街を歩いていると、レコード屋さんの店頭に貼ってあるQUEEN来日公演のポスターが目に止まりました。
「行きたかったな...」と恨めしげにポスターを見直したその時、「昼の部=14:00~」とあるのを見つけたのです。

「お母さん!!昼の部がある。夜じゃない。14時からある!!行かせてーーー」
多分、中学生とは思えない駄々のこね方をしたと思います。レコード屋さんの店頭で懇願する私に兄が助け舟を出してくれました。「僕が着いていくから」と。
兄は以前ミッシェル・ポルナレフのコンサートを同じく九電記念体育館に観に行ったことがあったので、兄についていけば間違いありません。
とうとう母も根負けして「勝手にしなさい」とチケット代と帰りの電車代を兄に渡してくれました。


母の気が変わらないうちに、兄と私はお昼ご飯も食べず急いで九電記念体育館へ向かいました。
会場に到着し当日券を2枚買ってから兄が体育館の横に行こうと言います。リハーサルの音が聞こえるからと。
壁に耳を当ててみて、聞こえたような聞こえなかったような...。そこのところはあまり記憶がありません。
時間になって会場に入ると、ポスターやパンフレットが売っていてそれを買う人たちで混雑していました。
アイスクリームも売ってたけど、アイスボックスの中のアイスクリームが全て「クイーンカップ」だったのは笑えました。シャレだったのか?(当時、明治乳業から発売されていたアイスクリームでQUEENとは全く関係ありません)
私はお金を持ってなかったのでパンフレットは買えなかったけど、兄がポスターを買ってくれました。コンサートのステージ上の写真でメンバーの顔はほとんど写っていなくて、あまり良いポスターではなかったけど、それでも嬉しかった。

私たちの席は舞台上手側2階の後ろの席でしたが割と空席があったように思います。
兄が「照明が消えたら前に行くぞ」というので、暗くなるとすぐ席を立ち、一番前まで走って行って通路に膝をつき手すりにしがみつくようにして始まるのを待ちました。

白いスクリーンにフレディーマーキュリーのシルエットが映し出され、ボヘミアン・ラプソディのオペラパートからコンサートは始まりました。
私にとっては初めてのロックコンサート。覚えているのは音量の凄さ。
ロジャー・テイラーの金髪が雑誌の写真で見るより明るい色だったこと。ジョン・ディーコンが演奏中親指を時々舐めながらベースを弾いていたこと。
コンサートが終わって帰りの電車に乗るってからも、耳がモワ〜とした感覚がしばらく治らなかったを覚えています。
これが私のQUEENコンサートの思い出です。


こんなに熱狂的なファンだったはずなのに、その時期は意外に短く5枚目のアルバム『華麗なるレース』以降はレコードを買うのもやめてしまい、以降プログレ系のロックに興味が移ってしまいました。
1991年フレディー・マーキュリーが亡くなったことをニュースで知った時、不思議な寂しさがありました。もう随分QUEENなど聴いていなかったけど、私の音楽漬けの生活はQUEENがきっかけだったことは間違いなくて、聴く音楽は変わってもそれは今も続いているのです。

映画「ボヘミアン・ラプソディ」素晴らしかったです。エンドロールが終わるまで席を立てませんでした。ただ...最後はやっぱり「GOD SAVE THE QUEEN」でシメてほしかったなと思ったのは、私だけかな?

『中国と日本 二つの祖国を生きて』

装丁と組版を担当した『中国と日本 二つの祖国を生きて』が仕上がりました。
この本は1953年、中国人軍医の父と日本人教師の母の間に生まれた小泉秋江さん(著者)が、
「大躍進」運動や「文化大革命」の下に体験した壮絶な半生を綴った記録です。
今まで文革関連の本を装丁したのはいくつかありますが、2014年に発刊された
『北京と内モンゴル、そして日本−文化大革命を生き抜いた回族少女の青春記』(金佩華 著)も、
小泉秋江さんと同じく少女期の文革体験を記した本でした。
どちらの装丁もそうでしたが、赤色を使うのは嫌われました。
中国共産党の赤色を思い出し辛い体験が蘇るのだそうです。
そういうことから『北京と内モンゴル、そして日本』では青を(文中に青が好きとあったので)、
今回の『中国と日本 二つの祖国を生きて』では黄色(中国の伝統色:黄琉璃)を使用しました。
本の内容は辛い実体験が書かれているのですが、あえて装丁を重く暗い感じにはしたくありませんでした。
仕上がった本を著者さんが手に取った時、喜んでいただけるように…という思いを込めてデザインしました。
http://designpool.jp/bookdesign/

著者=小泉 秋江
集広舎/2018年/四六判・並製/268頁
本の詳細は集広舎のwebsiteまで
http://www.shukousha.com/information/publishing/6720/

装丁を担当した新刊のご紹介です

装丁を担当した『いい家をつくるために、考えなければならないこと《住まい塾》からの提言』が仕上がりました。

「住まい塾」代表の建築家・ 高橋修一氏著の新刊です。帯文に「住宅よ、自然に帰れーー豊かな空間で心地いい暮らし」とあるように、装丁もナチュラルでシンプルなデザインを心がけました。
http://designpool.jp/bookdesign/


著者=高橋修
平凡社/2018年/四六判・上製/264頁

本の詳細は平凡社websiteまで! http://www.heibonsha.co.jp/book/b372210.html

『松浦党風雲録 残照の波濤』

装丁を担当した『松浦党風雲録 残照の波濤』が仕上がりました。http://designpool.jp/2018/08/19/zansyounohatou/

本書は戦国時代の上松浦を舞台とした歴史小説です。
中世山城・獅子ケ城を拠点に勢力を拡大した松浦党の鶴田前。その嫡子として戦国動乱の世に生まれ合わせた男、鶴田賢の物語です。

2001年8月に唐津市厳木町大谷から十字架が出土しました。
伊万里や平戸に近いこの町は、かつてはキリシタンが少なくなかったようで、町の一角で潜伏キリシタンが処刑されたこともあったそうです。著者の牛尾氏はこの事が契機となり、郷土を守るために散っていった人びとのことを伝えたいと思い執筆を始めたという事です。
カバーのデザインは夕陽に光る玄界灘の大波をイメージしてデザインしました。